気がつくと洞窟にいた。
高さ20m、幅100m、奥行き200mはあるだろうか。
かなり広い。
しかも本来は暗いはずのそこは明るく、真昼の太陽の下にいるようだった。
内部には木が生え、芝生が張ってあり、
まるでどこかの公園にいるようだ。
しかし、よく見ると壁に野原の遠景が描かれていた。
紛れもなくここは洞窟の中なのだ。
電線張り。
そう、ボクはここで電線を張っているのだ。
電線は正確に碁盤目状に張らなければならない。
そうしないと何が悪いのかは知らないが、そうせずにはいられなかった。
メジャーを取り出して電線と電線の距離を測定し、
木と木の間に張っていく。
かなり神経がすり減る作業だ。
あらかた電線を張り終えると高さ3mはあろう、
巨大な手にヒョウ柄のペイントをしている男がいた。
離れてみると本物のヒョウが座っているかのようだ。
彼もまた、何かにとりつかれたように作業を進めていた。
まだ塗らなければならない”手”はあと2体ある。
ボクもなんだか芸術意欲がメラメラと燃え上がり、
そのうち1体をペイントさせてもらうことにした。
塗り絵なんてお手のもの、ちょいちょいちょい。
小1時間かかって”手”を塗り終えた。
だが、所詮素人。
プロの技にはかなうはずもない。
生き生きとしたヒョウ柄が描けず、まだまだ修行が足りないと痛感するのであった。
ここまで来れば勘の鋭い読者は、壁画があることでもお分かりであろう、
そう、実はここは銭湯だったのだ。
”手”のペンキも乾いたころ、お客さんがやって来た。
総勢100人の美女集団だ。
そのうち、男性客もやって来たが、女湯へ入ろうとするので
男湯へと誘導した。
中には背中に入れ墨をしたヤクザもいた。
客の流れが一息ついて、休憩していると
かたわらにワイン(750ml入り)が1本100円で販売されていた。
これはお買い得だ。
トイレから出てきたヤクザに、このワインはどこ産なのか聞いてみた。
ヤクザは何も言わずにワインのラベルを指さした。
ラベルには日本語で文字が書いてある。
(日本産のワインがこんなに安いなんて!)
仕事が終わったらおみやげに買っていこうと、堅く心に誓ったのだった。
突然、地響きがする!
洞窟の奥にあった巨大なヘラクレスの石像が動き始めたのだ!
石像はかなりの早足でこちらに迫ってくる!!
ズン!ズン!ズン!!
1歩進むたびに洞窟全体が揺れる。
ゴアーォオオオオオオーーーッ!!
石像が吠えた。
と同時に、石像は大仏へと変身していった!
奈良の大仏と同じタイプだ。
ズシン!ズシン、ズシン!!!
更に足音は大きくなる!
大仏は次第に輝き初め、ついには全身が金色にまばゆく光るのだった!
高さ50mの黄金の大仏!!!
(このままでは大仏に踏みつぶされる!)
そう思ったが、狭い洞窟の中では逃げ場がない!
すると、物陰から美しい少女が現れた。
流れるような長い髪に赤い唇、澄んだ瞳。
「安心しなさい。私の美貌で大仏を引き寄せましょう」
そう言うと、大仏の前に敢然と立ちはだかった。
迫り来る大仏!
しかし、少女は頬を赤らめた。
(なんて素敵な大仏様なのかしら)
少女は大仏に亡き父の姿を思い重ねているのだった。
ウゴーーーーーーァ!!
大仏は少女には目もくれず、脇を抜けて街へと出ていった。
眼下に広がる市街地はたちまち火の海となった。
このままでは街が壊滅される!
地球の平和を守るため、ボクも急いで街へ降りていった。
自分の家はまだ壊されていなかった。
すぐに2階へと駆け上がり、テレビのスイッチを入れた。
ボワンボワンボワーーーーッッ!!!
すさまじい大音量!!
ボリュームが大きすぎる!!
早く音を小さくしなければ!
リモコンのスイッチを何度も押すが、いっこうに音は小さくならない。
どうすればいいんだーーーっ!!!
ボクはパニック状態に陥ってしまった。
ハッ!
「なーんだ、よく見たらこれ、ビデオのリモコンだった」
こうして、無事テレビのボリュームは小さくなり、
事なきを得たのだった。
めでたし、めでたし。
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